水は形を変える

シェイプ・オブ・ウォーターを観てきた。

以下ネタバレ感想。


美女と野獣」「人魚姫」「赤い靴」のようなおとぎ話の要素をふんだんに盛り込みながら、決してその筋に従って展開するのではない物語で、「マッドマックス 怒りのデスロード」が神話の語り直しだったのなら、これはおとぎ話の語り直しというところか。

興味深かったのは敵役であるストリックランド(マイケル・シャノンは「噂はかねがね……」な俳優だったけど、確かに素晴らしい演技だった) 極端におとぎ話的な物語の中でただ一人「たとえ」や「昔話」を持ち出す男だが、彼にとってそれは「こうあるべき物語」でしかなく、監督のデル・トロが抱いた「なぜ美女と野獣では最後に野獣は人間に戻るのか?」という疑問を一笑に付す人間として描かれている(彼が非常に現実的で、かつ「アメリカの夢」を具体化したような家庭や家、車の持ち主というのも「こうあるべき物語」に従って生きてきた人間ということをよく表していると思う) ストリックランドという名前は story と catholic の合成語であり(彼は「神は自らの姿に似せて人間を作った」という物語の中に生きている)、そこに land という言葉が付け加えられることで彼がこだわる「土地」(ボルチモアは彼にとって忌むべき土地であり、もっと都会に引っ越したいと思っている)と彼が奉仕する「国」の存在が強調されるとともに、「土地」ではない「水」の中で結ばれる「彼」とイライザのつながりを鮮やかに浮かび上がらせる構図になっているなと感じた。