読了。

奇想の美術館 イメージを読み解く12章

奇想の美術館 イメージを読み解く12章

絵画・写真・彫刻・建築からマングエルがそれぞれ数作品ずつ取り上げ語った一冊。といってもマングエル式というべきかその話はとりとめもなく広がりながら漂う。今もメモを作ろうとひも解けばその話の渦の中に巻き込まれてどこへたどりついたものかと途方に暮れる。
撮るもの・撮られるものの隔たりを超えたいと願ったティナ・モドッティ。「世界の不思議」としてもてはやされた多毛症の少女に、「ふつう」と異なる自分を見つめ自分を見る目を見つめ返すまなざしを見出した、女性ながら画家となり「怪物」となったラヴィニア・フォンターナ。アレクサンドロスとダレイオス3世との間に起こったイッソスの戦いのモザイクの中で、鏡のように盾に自分の最期の姿を映し出しそこに自分の姿を見つける瀕死の兵士。他人を振りまわしその感情を切り刻み描き出すことでやっと自分を描くことができたピカソ。どこまでも「記憶をとどめる」ことからかけ離れていくホロコースト記念碑。そして自らの慈悲を示す絵画を求めた人々に、生々しい貧者を描くことでその偽善を糾弾したカラヴァッジョ。
カラヴァッジョの項は期待していた分もあってか少し不満足だったが、アレイジャディーニョの項は何度も再読するべきだとおもった。