It's crazy, it's party.

ユーロビジョン2023感想。

ユーロビジョンについては元々長く存在は知りつつも特に自分から聞くことはなかったのだが、三年前にフォロワー①が Måneskin にハマり、二年前にフォロワー②が TIX に落っこちた結果、去年私が(大会終了後に) Subwoolfer につまづいてしまうというドミノ倒しが発生した。

ということで今年はセミ1・2とファイナルをリアルタイムで全部見た。ごめん嘘ついた、ファイナルの後半は寝落ちしてた。

国名のアルファベット順で。動画はセミかファイナルから。

Albina & Familja Kelmendi - Duje

youtu.be元々こういうの好きという枠だったのだが、案外こうした歌謡曲スタイルで攻めてくるところが少なかったので結果的に際立った感じ。パフォーマンス順もうまいところに滑り込んだ印象。Kelmendi パパの美声に気づいたのはファイナルだった(遅い)

Brunette - Future Lover

youtu.be前年から薄々気づいていたのだが、どうやら私は女性ソロに対する審美眼が著しく欠けている。ということで下手すると Iru と頭の中でかぶるとかいう雑すぎる現象が起きていた。

センターステージのセット、会場の一部からめちゃくちゃ見えにくそうだな……と思っていたらセミでスモークがもくもく上がって姿が完全に消えてしまっていたのには笑った。ファイナルでは反省した模様。

Voyager - Promise

youtu.beMV ではうーん?という感じだったのが、セミでのド派手パフォーマンスで心を掴まれ、結果発表で映るたびに「俺たちまだ呼ばれてませーん!」とヤケ飲みパフォーマンスしていたのにすっかり好きになってしまった。なお決勝では審査員採点発表中に映されたら待機席でもぐもぐご飯食べてたりしていた。油断しすぎ。

"Have you ever prayed for human touch?" でほっぺちょんしていくのもおちゃめでよかった。

Teya & Salena - Who The Hell Is Edgar?

youtu.be好きになるなというのが無理な Poe Poe Poe ソング。女性ソングライターがエドガー・アラン・ポーの亡霊に取り憑かれて……という奇天烈な設定の曲だが、これ絶対曲を作ってポーポー音を当てていてエドガー・アラン・ポーを引っ張り出したんだと思っている。あと「自分自身ではない何かが自分の体を使って書いているような感覚」は正直わかる。

エドガー・アラン・ポーのような文才があったとしても、Sportify で一回再生されて0.003ドルなんていう雀の涙しか手に入らない……というのはサブスク時代を反映した現代的なテーマだが、エドガー・アラン・ポーも作品は売れても結局困窮していたしな……という超時代的なテーマでもある。

ファイナルのトップバッターで会場を温めるにはこれ以上ない曲だったが、早すぎた登場と MV での世界観が完成されすぎていたのがパフォーマンスのインパクトを下げてしまった印象。

TuralTuranX - Tell Me More

youtu.be双子によるブリティッシュポップ風デュオ。なんか骨身に染みて馴染みのあるサウンドだが、じゃあユーロビジョンで際立ったものになるかは……というところ。

Gustaph - Because Of You

youtu.be元々はフォロワーの推し曲だったのだが、まあ歌がうまい……のも当たり前で、ヘント王立音楽学校の声楽の先生とかいうプロ中のプロ。

以前歌手としても活動していたり、バックボーカルでユーロビジョンに登場しているので決してこうした場と縁がない人ではないのだが、セミではちょっと緊張していたりファイナルでは逆に感極まっていたりしていた。といっても歌のクオリティが下がるのではなく、むしろ情感深さを伝えていた……というのは贔屓目かな。

曲はいわゆるエンパワメントソングで、本人もオープンリーゲイ(大会にはパートナーが帯同していた) 「壊されそうになっていたときを覚えているかい、でも今の僕たちを見てごらん」という LGBTQ+ への差別に対する戦いを「歩み続ける」力強さに満ちた歌。

この声でいろんな歌を聴いてみたいので新曲出してくれないかな~と思うのだが、本人の性格的に音楽活動は今後も積極的にやらない気がする。

Let 3 - Mama ŠČ!

youtu.beそうか、国名順にするとお前らが次なのか……。

MV を見たあと「クロアチア国内予選何があったん???」と国内予選動画を見に行った(実話) 音楽のクオリティは高いし、メロディも結構好き。ただ……何だろう……すごいサイケでシュールな悪夢を見ているような……。

あからさまなまでにファシズムや独裁者を風刺する、いわゆる揶揄する言葉としての「意識高い」系バンドだが、そうした嘲笑を封じ込めるどころか雲散霧消させる圧倒的お下品ブラックユーモア。ちなみにこのパフォーマンスは圧倒的に「大人しい」方だそうです。ヨーロッパのお茶の間に流しても安心!

Andrew Lambrou - Break A Broken Heart

youtu.be出たな水系男子ソロ。去年のこの枠は Ochman でした。

MV のしゃらくさいメロドラマ仕立てに失笑してしまいどうしてもそれに印象を食われていたのだが、実際にパフォーマンスを見てみるとパワフルな歌唱力。去年はオーストラリア予選に出ていたというので実力はお墨付き。代表国が変わるのはフィギュアスケートのあれと同じ仕組みねと納得。

水系男子ソロのくせに後半ファイアーするのでやっぱり笑っちゃうんだけど。

Vesna - My Sister's Crown

youtu.be「私の姉妹から王冠を奪い取ることはならぬ」という歌詞、ウクライナ語で高らかに歌われるサビ、そして東欧諸国の民族衣装を連想させる衣装に身を包んだ六人が舞い踊る不穏な雰囲気の MV ……と、ロシアのウクライナ侵攻をイメージしていることは想像に難くない曲に正直腰が引けていたのだが、セミでのパフォーマンスを見て評価が一変。衣装も髪型も揃えてのパフォーマンスは一見すると「日和った」ようにも見えるが決してそうではなく、むしろ違う方向できちんとメッセージ性を強く出す仕上がりになっていた。

サビのメインモニターで映し出される「掌を出し、親指を畳み、それを他の指で覆う」しぐさは家庭内暴力を受ける女性が助けを求めるユニバーサル・サインであり、「シスターフッド」と「女性の権利」を力強く示すものに。これに気づいたときは衝撃だった……。もちろん元のウクライナへの連帯を訴える力が失われたわけではなく、二重にも三重にもメッセージを重ねられる芯の強い曲だと感じた。

Reiley - Breaking My Heart

youtu.be十年前の自分だったら間違いなく「ハッ」と鼻で笑っていたと思うが、この曲を「かわいい~」と言いながら聴いていたので歳は取るものだなと。

K-POP をイメージしているのだろうが、他の曲を聴いてみたら「あれ、もしかしてこれ声質とコードが合ってないのでは……?」という気付きを得た。かわいいんだけどね(二回目) パフォーマンスでもそこが弱々しさとして出てしまった印象。かわいかったけど(三回目)

他の出場曲のカバーとかはなかなかよくできていたと思うので、次にチャレンジすることがあったらもっと力強く歌える曲で出てくれるといいなあ……。

youtu.be嫌いなわけではないのだが、私の審美眼というか理解度が超低い女性ソロジャンルでしっとりバラードとなると評価軸がよくわからねえ……となってしまい。自動演奏ピアノと会場のスマホライトを活用した演出は独特でよかった。

youtu.beユーロビジョン2023は間違いなくカーリヤのユーロビジョンだった。おどろおどろしささえある始まりからの、インパクトしかないパフォーマンス、そして誰もが大声で叫ばざるを得ない "Cha Cha Cha" のフレーズ。さらに曲とパフォーマンスを掘り下げていけば、そこに現れるのは仕事に疲れたシャイな青年がお酒の力をほんの少しだけ借りて心を開いてダンスフロアへとチャチャチャのリズムで繰り出していく姿であり、シャイさと繊細さを垣間見せるカーリヤ本人がフィンランドのまだまだ無名の青年という立場からユーロビジョンを文字通り席巻する一大スターとしてファイナルの舞台へと飛び出していく姿に重なっていく、まさしくユーロビジョンドリームを体現する曲となった。

優勝こそはならなかったが、しかし、「二位でありながらも大会と永遠に結び付けられることになる」立場もまた、誰にでも成し遂げられることではない。

願わくば、繊細な彼がこの「ユーロビジョンのカーリヤ」という立場に苦しめられることにならないように。

youtu.beポストカード(パフォーマンス前の紹介ビデオ)のインパクト強すぎ。黒馬に乗り颯爽とフランス風庭園を駆ける漆黒の淑女を朝の四時過ぎに見たら幻覚だと思っても仕方ないと思います。あとパフォーマンス順が Luke Black → La Zarra → Andrew Lambrou で、さながら「両脇に儚げ美青年とスポーティな好青年を従える漆黒の淑女」の構図になってたのには笑った。ボス戦じゃん(?)

高低差を生かしたパフォーマンスはシャンソンイメージのクラシカルな歌姫としての風格があってよかった。何であんなに点数低かったんだ……?

youtu.beだから女性ソロに対するやる気が低すぎる……! 正直 Brunette と違いわかってきたかな……?ってなったのセミファイナルでした。やる気あるんか!?(自分に言ってます)

youtu.be気を取り直して。ベテランメタルバンドだがこうした一見おっかないメタルバンドあるあるのいい人エピソードてんこもり。なんと出場曲全部聴いてみたをやっている。い、いい人だー! カーリヤの Cha Cha Cha カバーとかデスボイスの重低音っぷりに「本家……?」と謎発言してしまった( Cha Cha Cha は本来声が優しいカーリヤの肩肘張ったデスボイスだからいいという点もあるのだが)

なお順位は最下位……ドイツだからさ……でも「次も出てくれって言われたら速攻で引き受けるよ!」と言ってくれたり最後までいい人全開だった。

youtu.beプレ期間にあまり出てこないな~と思いつつ A Little Bit More ではアコースティックバージョン出したりと結構いいじゃんという手応えだったのだが、本番は緊張とセミの低調な音響に足を引っ張られたかなという印象。

youtu.beやったー元気いっぱいソングだー! 自分の音楽趣味わかりやすい。

曲そのものも好きだったのだが、植物イメージのステージングをリハーサルで見てめちゃくちゃ楽しみにしていた。楽しかった……何でウケなかったんだ……こうして人はユーロビジョンの結果に一家言あるマンになっていくのだな……。

youtu.be曲としては嫌いではなかった……のだが、顔を隠した MV にさては覆面バンドか……!?と去年 Subwoolfer につまずいた身としてガタッと立ち上がったら、予選で普通に顔を見せていたと聞いてずっこけたり、ステージングも方向性がよく見えなかったり……と着地点がわからなかった感じ。曲は嫌いじゃないんだよ(二回目)

youtu.beMV かわいい(初見の感想) 男の子がおどおどデートの席?で待っているのをよそにバリバリ歌っていたら結局デートの相手は君なんかーい!というオチ、嫌いじゃない。

しかし曲そのものを聴いていたらいろいろ盛り付けすぎという印象に。結局 Power of Unicorn パートと Phenomenal パートとダンスブレーク+ Unicorn! のどれがメインなんですか? 全部? じゃあ仕方ないね!

youtu.be美声で歌が巧い美形のイタリア男という全部盛りだが、面白いくらい刺さらなかった。これは単に私の魂が Marco Mengoni という人物のすばらしさを受け止められずにエラーを起こしているだけです。柄杓で海の水を計れと言っても無理がある。

youtu.beMV の不穏な雰囲気にひぃん……となったまま大会が終わったのだが、改めて聴いてみたらあれ、超好きなやつでは……? Sing you lullabies のバックで入るドンッドンッの打ち込み音好き。あとアコースティックバージョンは絶対見てほしい、イントロの打ち込み音そうやるんだ!?ってなるので。

ところでこの歌詞、井上陽水スガシカオで聴いたような気がする。

youtu.beサビのメロディがやたら頭に残ったな……気づいたらここばっかり口ずさんだりしていた。

youtu.beやったークソダサセーターだー! サックスまでついてきたので満点です。ステージングも謎の三部構成で仕掛けがいっぱいの楽しいものだった。でもセーター早変わりを映さなかったカメラワークについては反省を促す。

人間立て看板に反応するのは2011年のツール・ド・フランスを見た人間なら避けられないパブロフの犬現象……。

youtu.be去年の Kalush Orchestra の優勝で伝統音楽系が増えるかなと思ったけどそうでもなかった中で貴重な伝統音楽枠。MV から世界観ががっちり決まっていたので、凝りすぎないシンプルながら十分すぎるステージングでやりきった印象。そんな中でも角の女性が向かい合うことで円ができる=太陽と月が現れるのとか、そういうときに Pasha は目を覆われていたり目をつむっていたりで「見ていない」のとか、ちょっと謎めいた雰囲気があったのもよかった。最後息切れしていたのには笑ってしまったが。ところで終わってからきちんと歌詞を見たら、これ婚姻歌だったんですね。

ちなみに以前ユーロビジョンに出場しているそうで、プレ期間のイベントではその時の曲をこの衣装のまま歌ってたりしていた。世界観が違いすぎる。

youtu.be曲としては一番好き~なのだが、ユーロビジョンでウケなかったのも正直納得できる。ありていに言えば無難すぎるんだよな……。

ユーロビジョンの曲を聴くときはやはり「ユーロビジョンの曲」という意識で聴いているんだなというのがプレ期間からを一通り経験してみての発見の一つなのだが、これはユーロビジョンの曲であるかないか関係なく好きだと感じたし、逆にそうした「ユーロビジョンでなければ出会わないような曲」ではない点がまあウケなかったんだろうなとは思う。

youtu.be去年の優勝者である Subwoolfer が出るということでノルウェー国内予選を見た中で、確かにこの子が優勝するだろうなーと納得した。えっこれがオリジナルのデビュー曲? こわ……。

ステージングは曲の躍動感に対して下手に動き回らず直線的に前に進むなどの最低限の動きに抑えることで、逆に女王の威厳を示す表現になっていたと思う。

流し目のシーンで毎度「じょ、女王様がこちらをご覧に……!」って気持ちになる。

youtu.be今大会一番のお騒がせガール。国内予選でのパフォーマンスがあまりにも低調すぎて代表選出に物議を醸し、その後もマイペースにプレ期間を過ごしている様子に SNS で批判が巻き起こったりしていた。ただ正直なところ「 Blanka には何を言ってもいい」という風潮に乗っかってるだけの人も多かったと思う。いわゆるネットいじめですね。

それがしっかりと歌・ステージング共に仕上げてきた上にダンスブレークまで入れる大盤振る舞いで、格を見せつけることに。でも映像演出はくどすぎると思うよ!

youtu.beああ~うん……という感じで、いやもうちょっと何か刺さってもいいんじゃない!?と自分でも思った。本当何で刺さらなかったんだろう……。

youtu.be正直な話、国内予選動画を見てきた中で一番評価は低かったのだが、本番では歌唱力そのものは力強かったし、曲とステージングが自分にハマらなかったんだなという印象。国からの支援がほぼない状態だった点については同情する。

youtu.bePiqued Jacks ー! 俺だー! 国内予選動画を見て「なかなかいいんじゃない?」と思ってたら事前評価の低さにびっくりした……。まあユーロビジョン的にウケるかといったらそうじゃないとはわかるんだけど、ボーカルのアンドレアの声質がめちゃくちゃ好きなので。あの顔からこの声が出るのが個人的にツボ。

youtu.be歌……ってる……?という印象。曲そのものは実際のところ割と好きなタイプな気がするけど、やっぱりユーロビジョンではガンガン歌ってほしいという先入観なんだろうなー。

youtu.be出たな陽キャいや実際はそうでもないのだが。サウンドは嫌いじゃないけど、タイトルの Carpe Diem (今日という日を摘み取れ)という言葉に籠められた退廃的な雰囲気もありながら刹那をつかみ取ろうとするアンニュイさと必死さがやたらカメラ目線なステージングで全部吹っ飛ぶんよ。どうしてこうなった。

期間中の他の出場者たちとの絡みも楽しかった。 Gustaph の Because of You を気に入ってくれてありがとう。

youtu.beいかんせん去年の Chanelインパクトが強いので「あー今年はこんな感じなのねはいはい」という感じだったのだが、それにしても点低すぎません!?

フラメンコのカンテ(歌)をベースにしたスペインらしさ全開感はよかったけど、逆にキャッチーさには欠けた……というやつなのだろうか……。

youtu.be最強女王。カーリヤのパフォーマンスを見る度に「どうしてこれで勝てないんや! Loreen か! 仕方ないな!」ってなります。

プレパーティでのあまりよくない音質の映像でもわかる圧倒的歌唱力。その人が優勝パフォーマンスでは出だしを間違えたのに、やはり優勝候補最有力ってのはすごいプレッシャーなんだな……と思った。

youtu.beわあいスイス、スイスのしっとり系男子ソロ大好き、なのは Gjon's Tears のせいです。

「かつては水鉄砲で遊んでいた子供が、その手に本物の銃を握らされて戦地に立つ」という、国民皆兵のスイスというバックグラウンドも感じさせる反戦歌。ステージングもそれを意識した構成になっていてよかったが、若干説教くささというかくどさはあったのかもしれない。

youtu.be去年の優勝国でありながら開催が不可能という事情と、アゾフスタリ製鉄所をテーマにした曲での出場と、ロシアのウクライナ侵攻が続く限りそこに政治的なメッセージが伴うことは避けられないという、ユーロビジョンの「政治的主張は禁じられる」理念とのせめぎ合いを続けるしかないウクライナ代表だが、だからこそ「出場することに意味がある」なのだろう。

そうした面とは別に、ステージングは四面パネルでの映像演出など一線を画していてよかったし、曲もかっこよかった。ユーロビジョンでこういう曲がウケるかといったら微妙だろうなとは思うけど……。

youtu.beMV の時点では悪くない印象だったもののプレパーティのパフォーマンスを見ていたらどうも不安が……と思っていたのが決勝のパフォーマンスで的中してしまった感じ。いやステージングのインパクトに隠れがちだけど音楽的にもレベルの高い Let 3 の次に来たオオトリだったという順番がアレすぎた気もするが。なんかまたいつかリベンジしてほしい気持ちになってしまった。

 

ということで各国代表曲発表からのんびり追いかけてみたが、まあ楽しかった。来年も体力気力問題なければ追いかけたいところ。