私が一番最初に読んだマンガは、おそらくだがますむらひろしさんの「アタゴオル玉手箱」。
現実だとか空想だとかがごっちゃになっており、そうであることを許される子供時代にこういう作品に出会ったのは私にとっては大きい。私は真剣に信じていた。世界のどこかに、アタゴオルがあると。だがそれはどこかに旅したらたどりつくと言うよりは、星街からヒデヨシたちがアタゴオルに帰ってきたような、ある空間を通ってたどりつける場所と思っていた。さてどうやってたどりつこうか? 暗い暗い道をずうっと通って、向こう側に光が見えて、ゆっくりと近づいて、光の中に出たら、アタゴオルに森に生えるあの「木々」が一面に広がり、そこからがさがさと、魚屋から盗んできた魚を背負うヒデヨシが現れてこういうのだ。「お前どこから来たんだ?」


私がアタゴオルが「この世界」にはないものと知ったのはいつごろかは分からないが、そういう空想を失うことがどれほど「哀しい」ことなのかを、いまさらに思う。