あるところに、一つの器を持った男がいました。男はその器が実に美しく、実に立派なものと考えて、満足していました。
男の家の前には井戸があり、毎日、その器にちょうど収まるくらいの水が沸いていました。男は毎日器に水を収め、それがぴったり収まることに満足していました。


ある日、男は自分の器を持って別の男の家に行きました。その家の男も、一つの器を持っていました。男は考えました。何て醜く、みすぼらしい器だろう。私の器のほうがよっぽど美しく、立派だと。
その家の前にも井戸がありました。男はその井戸から、自分の器で水を汲んでみました。すると器から水が溢れてしまいました。男は怒りました。私の器に収まらないくらいの水が沸いているとは、何てひどい井戸なんだと。その分、私の家の井戸は私の器にぴったり収まるくらいの水が沸いている、なんていい井戸なんだろうと。


男はいろんな家に行きましたが、どの家にも男の器とは違う器があり、どの家にも男の器にはぴったりでないほどの水が沸く井戸がありました。男はそのどれもが、自分の器よりも醜くみすぼらしく感じ、自分の井戸よりもひどいと感じました。


男はある日、海にたどりつきました。男は海の水を、自分の器で汲んでみました。海の水は、男の器には収まりきりませんでした。男は怒りました。私の器に収まらないとは、なんとひどい海なのだろうと。


男は自分の家に戻りました。そして自分の器をつくづく眺めました。実に美しく、立派に思えました。そして自分の井戸で水を汲みました。ぴったり器に収まりました。
男は満足しました。なんていい器なのだろう、そしてなんといい井戸なのだろう。そして、あの家の器も井戸も、あの家の器も井戸も、あの家の器も井戸も、あの海も、なんとひどいものだったと考えました。


てな話を考えながら寝た。
何かいちいちサイトに載せるのも微妙な話なので、ここで書いて満足しておく。ここに書くなよっていう意見はスルーさせてください。