ツール・ド・フランス開幕。
エル・パイスアルベルト・コンタドールのインタビューが載っていたので拙訳を。後日訂正する可能性もあるのであしからず。
そのスーツケースの中には、コメディー映画とアクション映画がたくさん入ったノートパソコンと、高品質のスピーカーが入っている。本は一冊もない。「悲しい映画? いいや。自転車に乗っていて感じる痛みで十分さ。本? いいや。i Podで音楽を聴いているほうがリラックスできるよ」 部屋の中には友人のベンハミン・ノバルがいる。アルベルト・コンタドール、27歳になる彼は三度目のツールに向けて用意ができている。それはランス・アームストロングとの二度目の決闘の準備ができているということだ。


インタビュアー(以下Q):専門誌の表紙はどれもあなたを優勝候補に挙げています。始まる前からツールに勝ったものと考えないように、どうしていますか?
アルベルト・コンタドール(以下A):数年前なら、僕はこういうことすべてにかなり影響を受けていた。けれどこういうプレッシャーを普通のものとして受け止める段階にきたよ。こういうことがついて回ることには完全に慣れたんだ。外の人からすれば簡単に勝てるとおもうんだろうけど、僕は勝つことが難しいことをわかっている。ツールに勝てる年もあれば、そうでない年もある。僕が戦っているあらゆることからくるプレッシャーの中で、僕はすごく落ち着いてるよ。
Q:しかし優勝候補であるということは、ミゲル・インドゥラインを見ればわかるように、さらに困難なことになるでしょう。あなたは選手全員のライバルであるわけです。
A:みんなが僕を真っ先に蹴落とそうとするとはおもっていないよ。人は勝つために戦う、たとえ負けることになろうともね。けれど一回勝てば、そのたび勝つことは難しくなる。ベッティーニがクラシックに出るときは、みんな彼が優勝候補であることをわかっていた。レースが始まればみんなが彼と競おうとする。彼に勝てればとんでもないメリットがあるわけだからね。彼がアタックするときはみんなが車輪を前に押し出そうとする。ツールでの僕でいえば、どんな理由であれ僕が引き離されていたりその瞬間悪い位置につけていたら、同じことをしようとみんな必死になる。そうだろ? 僕はそれをわかってるし、どうしようもないことだよ。
Q:あなたはツールを二回勝ちましたが、それぞれ状況は異なりました。一度目は、驚くべきことでしたがラスムッセンの突然の追放によって、そして二度目は同じチームにいたライバルであるアームストロングと争ってです。この二度の経験からそうした役割を務めること、必要なことすべてを学んだのでしょうか?
A:いつだって学んでいるよ。今回は今までとは違う。同じくらい難しいか、もっと難しいかだ。僕は誰からもじっと見張られ、推し量られることになる。これほど長い期間のレースとなれば強いチームが僕には必要になる、決して失敗しないチームがね。僕のチームより強いチームがある。そのチームは様々な面で戦うことになるだろう、僕のフィジカル的な強さじゃなくて戦術の面でね。
Q:ツールでは差を生み出すのはほんのちょっとしたことだと常にいわれています。
A:どのレースもそういうちょっとしたことなんだ。けれどその差を埋めることになるステージがどのレースにもある。
Q:その細かなことについていいますと、最近は明日のステージのことばかりが話題に上がります。石畳のステージです。アームストロングは精肉屋のようなことになるだろうと言っています。このステージはあなたがマークされたり真っ先に脱落させられる可能性からもより重要なものだと考えていませんか?
A:石畳については他のステージで何かしら思いがけないことが起こることと同じくらいに話されている。僕にとってはそれは好都合だね、というのもこういったステージに向けて肉体面でも精神面でも準備することに努めているわけだから。こういう場合僕は注意を怠ることはできないんだ。一ヶ月前から覚悟していれば、物事は簡単だよ。
Q:つまりあなたは限界を定めることができる、強迫観念に陥らないよう極限の注意の中で自分を抑えることができる……。
A:あるステージが終われば、チームメートたちは次の日のステージについて考え始める。対して僕は次の日まで何も心配しない。リラックスする、今みたいにね。
Q:前回のツールの後、アームストロングは新チームを立ち上げ、あなたがレースを共に走ってきた六人の選手を引き抜きました。このことからあなたは新しいチームを作ることには……。
A:僕はできるだけのことをしたし、できるだけ互いを理解したチームを作るためのことをし続ける。どのレースでも、チームは完全に僕と一緒にやっているし、状況に適応している。何人かは自信を持って勝利を収めているし、むしろ他の年より成績がいい。僕は十分に戦っているし、そうし続けるんだ。
Q:自分の責任を果たしていると?
A:今僕がいるような立場にいったん着けば、こういう責任はついてまわるんだ、望む望まないに関わらずに。よくわからないレースで言われたことを為すだけしかない選手とは違ってね。僕には山ほど質問が投げかけられる。その質問の一つがチームメート全員のモチベーションを保つものであり、僕が彼らを必要とするときに100%を与えられるようにチームメートは僕と一緒にいるんだ。
Q:アームストロングは別のチームにいるときと同じチームにいるとき、どちらがライバルとして危険でしょうか?
A:レディオシャックのようなチームにいるとき、いろんな方法でレースを展開させられる余地をたくさん持った強力なチームを持っているという意味で、彼はより危険な存在だ。そうだね、違うチームにいるときのほうが彼は危険だね。
Q:しかし同じチームにいたとき、彼はあなたをもっと束縛していた。
A:うん。彼は僕がしようとしていた戦術を知っていたし、レースのリズムを作った。いざというときに差を埋めようとするには僕に好都合でなかったこともたびたびあった。けれどけっきょくは、ツールで起こりうるいろんな状況もあって今年のほうがもっと危険だね。
Q:経験についていいますと、彼の戦いは第一週、石畳のステージがある週にあなたを追い落とそうとすることにあるのでしょうか?
A:フィジカルの面では彼はすごくいい状態だろう。けれど間違いなく彼はその経験を最大限に生かそうとするだろうね。それに彼は第一週にプランを進める上での進展や保障を得ることができることを知っている。けれどそれは僕のいるべき場所だ。トップに立って、選手全員がしようとすることを見るのはね。
Q:アームストロングはライバル関係を個人的な問題として扱っていたとおもいますか?
A:そうはおもわないな。
Q:あなたは彼を一位から追い落とした最初の選手であるわけですが……。
A:彼はとても野心的な選手、ツールをもう一度勝つという目的を果たす意欲を持ったチャンピオンだ。僕も彼に対して個人的におもうところはないよ。僕は論争に巻き込まれるようなことになったことはない。たとえ記者会見に出て、話を変えられて出てくることになっていてもね。僕は彼をとても尊敬している。彼は多くのことで偉大なチャンピオンだ。彼から学ぶことは多い。彼と同じチームにいた一年で、僕はたくさんのポジティブなことを学び取ろうとしたよ。
Q:つまり、基本的には彼を好意的に思っているわけですね……ではブリュイネールから学んだことは……。
A:アームストロングと一緒にいるときはそうじゃなかったけど、ヨハンと一緒にいるときは僕は多くのことを学べた。*1 レース中や戦術面で上手く切り抜けていくという点でブリュイネールは僕にとって先生だった。ヨハンはレースの優れたヴィジョンと豊富な経験を持っている。あることで優れている人と一緒にはたらくなら、それを活用しようとするべきだ。
Q:チームでヴィノクロフと一緒に走るということはどうでしょう?
A:彼は僕にとって鍵となる選手だ。彼のアグレッシブさはいずれ遠くからアタックするとき僕に有利なカードになる。こういったリーダーの素質を持っている選手がいるチームはそうそうないよ。


ヴィノクロフのことは最後にやっと触れる辺りに苦笑い。

*1:この一文は訂正する可能性あり