七月の中旬に金沢に行った。金沢市民芸術村で開かれていたポストカード展にある方が出品していたのでそれを観に行って、そのあと金沢21世紀美術館 | 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa.に「Alternative Humanities 〜 新たなる精神のかたち:ヤン・ファーブル × 舟越 桂」を観に行った。初めての金沢だったけど案内してくださったIKEさんにはここで改めて謝意を。エビカレー美味しゅうございました。
ポストカード展はPixivの企画によるもので、自分が普段目にしない作風のものを目にする機会になった。個人的には日常系・自己肯定系よりも非日常系・ファンタジー系のほうがやはり好きなんだなあと確認した。


金沢21世紀美術館はとてもいいところだった。何度も来たいとおもわせる。常設展示もアニッシュ・カプーアの世界の起源レアンドロ・エルリッヒのスイミングプールなど愉快な作品があったが、一番気にいったのは今回の展覧会の出品者であるヤン・ファーブル雲を測る男だった。


ポスターカード展を観に行ったついでに、名前はたびたび聞いていたので気になっていたヤン・ファーブルを観てみようという気持ちで行ったのだが、大変おもしろかった。遠目からは美しくても近づいてみるとぎっちり詰まった玉虫だったり、スライスされた骨だったり、巻きつけられた生肉だったり、針が外を向いた画鋲で覆われていたり、血で描かれたものだったりする。グロテスクなのだが、どこかそのグロテスクさを楽しんでいる自分がいた。
特に「私自身が空(から)になる(ドワーフ)」はポスターにも使われている作品だったが、実際に見てみて「ああ!」とおもった。ポスターに映っていないものがそこにあった。あれだけでも実際に観に行ってよかったとおもった。あとは中庭に設置されていた「水に書く男」がよかった。
舟越さんは知らなかったのだが、彫刻の首筋をずっと眺めていた。図録のインタビューではつるつるにする部分とわざと荒っぽさを残している部分があるという話だったが、その荒っぽさが残る部分がちょうど脈のように見え、奇妙な「人間らしさ」を醸し出していた。ただ自分としてはタイトルがどうもぴんと来なかった。たぶんその違和感も楽しめたらよかったのだろうけど。
あと二人の作品だけでなく、二人の作品の文脈となる過去の芸術作品*1もあったのだけど、その中に河鍋暁斎の「九相図」や「釈迦如来図」*2があったのが印象的だった。


金沢はいいところだった。歩いて移動したのだが、川沿いの道をずっと行き、街の中に入り、古い路地を残している地区に入ったりしているうちに、故郷の山口のいろいろな場所をぎゅっと集めたような場所のようにおもえてきた。

*1:特にヤン・ファーブルルーヴル美術館で展示品の間に自分の作品を展示し対比させるという展覧会を行ったことがある

*2:これがどう見てもキリストを意識しているとしか思えない絵だったのだが、調べたらフランス人に釈迦如来図を頼まれて描いたものだそう