東北沖太平洋地震、幸い私の住んでいる場所は揺れもなく直接的被害はまったくなかった。
ただ、一種の躁鬱状態に陥っていた一週間だった。被害状況を逐一鮮明に伝え続けるテレビに「何故自分は無事なのか?」という自問をしてしまう人なども多く見受けられた。この一週間は決して「平常」ではなく、おそらく今後も長い期間「平常」には戻れないだろう。むしろ地震前の「平常」はもう戻ってこない、そう考えた方がいいくらいかもしれない。
私自身は早い段階で言動は「平常」に戻ったように見えたが、一種の躁状態だった。一週間経った今やっとそこから抜け、反動の鬱状態が始まったがそれについては長らく対処してきたことだ。鬱状態が平常状態というのもどうなのだか、とおもわないでもないが。
現在は主に被災地の復興支援・福島の原発問題・関東地域での計画停電が主な話題となっている感がある。二つ目については現在の油断ならない状況に加え、私の地元に近い上関で地震発生直前に原発建設計画の夜間の強行が行われた*1というニュースもあって、今後とも注目していかなければならない問題だ。特に福島原発は関東向けの発電を行っていた機関だが、上関原発計画も電力売買のためといわれている。現在関東での節電計画は順調に進められているが、これが「通常」となるのか、それとも地震以前の「平常」に戻らざるを得なくなるのか、が気になるところだ。いずれにせよ今回の原発問題は上関原発計画の問題にも大きく影響してくるだろう。


明るいニュースをいくつか。といっても「私らしい」明るいニュース。
地震発生後に応援メッセージを出す海外サッカー選手やチームが多かった。私の一番好きなチームであるFCバルセロナも試合前に弾幕を掲げた。チャンピオンズリーグ決勝トーナメント第一回戦第2レグバイエルンvs.インテルでは、試合終了後 "You'll Never Walk Alone" (君は一人ではない)*2がスタジアムに流れた。
昨日はイタリアで自転車ロードレースのミラノ〜サンレモが開催されたが、日本人選手の宮澤崇史選手が出場し、また出走前には日本国旗を掲げて黙祷がささげられた。

via cyclowired
元画像→選手たちのサインを集めた日の丸がスタート地点に掲げられる | cyclowired
出走前の黙祷の様子(動画)
このほかにも復興支援のためのチャリティー活動などが行われている。


人生は続く。人それぞれに立ち直る形も時間も違うだろうが、生きている以上、生き続けるしかないだろう。
パウロ・コエーリョの『第五の山』という本がある。これは旧約聖書に出てくる預言者エリヤが迫害を逃れとある町に滞在することになり、そしてその町を出ていくまでの小説だ。ここでエリヤは安らぎと、破壊と、再生を知る。

 ずっと昔、愛国者ヤコブが野営した夜、何者かが彼のテントに入って来て、夜明けまで彼と取っ組み合った。ヤコブは相手が主だと知っていたが、それでも戦いを受けて立った。朝になっても、彼はまだ、負けなかった。そして戦いは、彼を祝福することに神が同意した時、やっと終ったのだった。
 この物語は代々受け継がれ、誰もが知っていた。時には、神と争うことも必要なのだ。人間は誰でも、その人生で悲劇に見舞われることがある。住む町の崩壊、息子の死、誤った告発、病気による体の障害などだ。その時神は、自分の質問に答えるよう、人間に挑戦するのだ。「なぜ、お前はそんなにも短く、苦しみに満ちた一生にしがみついているのだ? お前の苦闘の意味は何なのだ?」
 この質問にどう答えるかわからない者は諦めてしまう。一方、神は公正でないと感じて、存在の意味を求める者は、自分の運命に挑戦する。天から火が降りてくるのは、その時である。それは、人を殺す火ではなく、古い壁をひき倒して真の可能性をそれぞれの人に知らせる火なのだ。臆病者は絶対に、この火が自分の胸を焼くことを許そうとしない。彼らが望むのは、変ってしまった状況がすぐにまた、元通りになって、それまでどおりの考え方や生き方で生きていくことだけなのだ。しかし、勇敢な者は、古くなったものに火をつけ、たとえどんなにつらくとも、神をも含めてすべてを捨てて、前進し続けるのだ。
 「勇敢な者は常に頑固である」
 天界では神が満足の笑みを浮べている。なぜならば、神が望んでいるのは、一人ひとりの人間が、自分の人生の責任を自らの手に握ることだからだ。主は自分の子供たちに、最高の贈り物を与えているのだ。それは、自らの行動を選択し、決定する能力である。
 心に聖なる炎を持つ男や女だけが、神と対決する勇気をもっている。そして彼らだけが、神の愛に戻る道を知っている。なぜならば、悲劇は罰ではなくて挑戦であることを、彼らは理解しているからである。

 私自身はキリスト教徒ではないが、この物語は好きだ。不意に訪れた敵と朝まで戦いつづけること。そして朝が訪れ、自分を祝福するまでは立ち去らせないと宣言し、祝福を受けること。

*1:余談ではあるがこの強行は原発問題の発覚後も続けられていた。対岸の火事とはこのことかと、地震に関して巻き起こっている様々な非難や議論とは距離を置くことにしている自分もさすがに呆れた

*2:インテル所属の長友選手の元所属チームであるFC東京バージョン